ⓔコラム13-36-3 APECED (Autoimmune polyendocrinopathy–candidiasis–ectodermal syndrome)/APS1 (Autoimmune polyendocrinopathy syndrome type I)
単一遺伝子AIRE (Autoimmune Regulator) の突然変異によって発症する先天性の自己免疫疾患である.3主徴は,副腎皮質機能低下症,副甲状腺機能低下症,慢性皮膚粘膜カンジダ症で,性腺機能低下,甲状腺機能低下,頻度は低いが1型糖尿病を合併することもある.通常,慢性のカンジダ感染症で発症し,15歳頃までに自己免疫性の副甲状腺機能低下と副腎不全が出現してくる.胃の壁細胞機能障害による悪性貧血,自己免疫性肝炎,外胚葉系の異常(脱毛,皮膚の白斑,歯エナメル質形成不全,爪の萎縮,鼓膜の硬化,角膜異常等)が合併することもある.AIREは,胸腺上皮細胞や末梢血中の単球・樹状細胞に発現し,免疫寛容の成立に必須の役割を果たす.胸腺髄質上皮細胞に発現するAIREの機能低下は胸腺における多くの組織特異的自己抗原の発現を低下させ,負の選択,すなわち,自己臓器特異的蛋白質に対する免疫寛容が不十分となる.そのため,副腎皮質や副甲状腺等に特異的に発現する蛋白質に反応性のT細胞や抗体が出現する.慢性皮膚粘膜カンジダ症は,真菌感染の防御に必要なサイトカインIL–17やIL–22に対する中和抗体の出現が原因と考えられている.治療は対症療法で,内分泌疾患に関しては各種ホルモンの補充療法,カンジダ症に対しては,抗真菌剤が投与される.
〔峯岸克行〕